<和良川の釣り人 田口幹夫さん>
2005年2月3日(木)、金山町祖師野を抜け和良村(現郡上市和良町)へ入れば、一面の銀世界。和良川の水の流れは凛としてまだ、誰も人を寄せつけない。
雪をかき分け川岸を歩く。とうとう川の中へ入り両手で水をすくい顔を洗えばじわり、潔い冷たさが体中に染み入る。いつの間にか、和良川を歩いていた。
この日は和良村の川漁師、田口幹夫さん(昭和14年生)の釣り姿が浮かび上がった。和良川のアマゴを狙う田口さんの姿を眺めているだけで気持ちがよくなる。
翌4日(金)も幹夫さんは和良川に竿を向けた。幹夫さんの娘婿、池戸賢一さんが仕事の休憩時間に様子を見に来た。賢一さんは昨秋、和良大橋の下の瀬で42cmのアマゴを釣り上げている。
和良川も2月1日が渓流釣り解禁だ。しかし、和良川は成魚放流をしていないため解禁直後から釣り人は来ない。大水が一度出て、4月下旬頃から本格的にアマゴが釣れ出すのが和良川である。
<殺人事件に沈む>
一方、2月3日、4日の和良村はパトカーやマスコミ各社の車が走り廻り異様な空気に包まれていた。それは約70年ぶりに村で殺人事件が起きてしまったからだ。亡くなられた方の通夜、葬儀も行われ、村人は公民館に集められ事情聴衆を受けたり葬儀と交通整理の手伝いなど大変な毎日で、釣りどころではないのだった。そういう日に私たちは和良川アマゴ風景の一日を味わってしまった。
<民宿まごべのしし鍋>
3日の夜は金山町藤後野の民宿「まごべ」において、グツグツ煮えるしし鍋を囲みながら幹夫さん、賢一さん、それに同じ和良村の兼山悌孝(やすたか)さん、さらにまごべのご主人、池戸利行さんが加わり、和良川の釣りと川環境、村の歴史などを深夜まで語り合った。
<月刊つり人4月号(2005年2月25日発売)で紹介>
この雪の和良川釣り風景は「月刊つり人4月号」(2005年2月25日発売)の特集「春よ来い 渓に来い」巻頭で紹介され、表紙写真も田口幹夫さんの釣り姿が掲載されています。記事はつり人社編集部、撮影はアウトドアカメラマンで有名な津留崎健氏が担当し、私、長尾伴文が諸々を協力しました。
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