木綿でできた紺色の漁服(りょうふく)に胸あて、ザッと開いたスカート状の腰蓑(こしみの)を身につけ、風折烏帽子(かざおりえぼし)を被り、足中(あしなか)を履いた鵜匠の姿は魅力的だ。
風折烏帽子は篝火から頭髪を守り、胸あては火の粉や松ヤニをよけ、腰蓑はワラででき、寒さと水を防ぐ。足中は普通のワラジの半分の長さしかないものだからかわいらしく見えるが、魚の脂で滑ることはない。鵜匠は世襲制で宮内庁から<式部職鵜匠>の身分を与えられ、長良川鵜飼には6人の鵜匠がいる。
鵜匠が籠から首っこを掴み一羽の鵜を取り出す。首ひもを縛り、箱に入ったアユを飲ませ吐かせる。手早く一瞬の動きから鳥と鵜匠の習性が伝わる。鵜は海鵜で知能が高く、2〜3年かけて鵜匠に一人前に育て上げられる。

鵜匠と鵜:鵜の習性を語る |
 このヒモで鵜の首をしばる |

鮎を吐かせる |
 手縄をかけられる |
それにしても屋形船でアユ弁当を食べビールを呑むことはなんと風流なことだろう。船頭がゆっくりと川上へ漕ぎ出した。川面からの風が心地よい。上流に停留、河原を歩くこともできる。やがて鵜飼舟が上流から下りてきた。鵜舟は全長13m、鵜匠のほか舟の舵をとる<とも乗り>と助手の<なか乗り>の3人が乗り込んでいる。

屋形船の弁当 |

屋形船の鮎 |
松割木(まつわりき)がくべられ篝火が勢いよく燃える。手縄(たなわ)につながれた鵜たちは水面を悠々と泳いでいるかと思えば、一瞬に潜りアユを呑み込む。鵜匠は12〜13本の手縄を同時にさばくのだが、鵜たちの働き具合も様々だ。最後は6人の鵜匠による6隻の鵜舟が横一列に並び巻き狩を行う<総がらみ>で幕を閉じるが、まさに暗闇に浮かぶ芸術である。
喜劇王チャーリー・チャップリンも昭和11年、昭和36年の2回、長良川鵜飼に乗り、幻想の鵜飼を味わっている。

河原で涼む屋形船
鵜飼は暗闇でなければならない。車のサーチライトは多少、消えた。岐阜県人の9割以上が鵜飼乗船の経験がないようだ。原因は料金が高いだろう、一瞬に終わるだろう、よく見えないだろう、トイレがないだろう、個人で簡単に乗れないだろう、楽しみ方が伝わってこないなど考えられるが、かなりの部分が解決されている。まずは乗ってみることである。
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